犬とヒマラヤ | アジ旅日記
世界中を訪れた旅人はいつしかインドかハワイに行き着く…なんて話を旅先で聞いたことがある。
そんなインドに憧れて近所の書店で手にとったガイドブックには、現地の気候についてわかりやすく説明されていた。「インドには3つの季節があります。Hot・Hotter・Hotest。」暑さから逃れる為に世界地図を広げてみたら、インドの真上にあった国がネパールだった。
到着後、両替をしようと思ったらバックパックに入れていた現金がない…。空港の荷物チェック、後にも先にもあの時だけ。全財産の半分を失ったショックよりも、自分の迂闊さが可笑しかった。
悪路に揺られながら向かった先は標高2,100mにある村、ヒマラヤの展望台「ナガルコット」。人生で1度くらいは世界一の山を見てみたい。空港から約2時間。到着した天空の村は雲海に囲まれていて、遥か彼方にある神々が住む山が姿を見せることはなかった。
ネパールなんて来るんじゃなかった…。真っ暗な宿の布団の中で、今頃になってお金を盗まれた不安がジワジワと滲み出て来た。
ふと目が覚めて、時計を見たらAM4:30。窓を開けて見上げたら空はまだ薄暗くて、2頭の黒い犬がこちらを見ているのに気がついた。
眠い目をこすりながら宿から出たら、ちょっと怖いくらい大きなやつが尻尾を振って戯れてくる。彼らの毎朝の散歩道。犬の目線の先には朝焼けの雲海にヒマラヤが浮かんでいた。ほんの15分ほどの出来事。気がついた時には彼らはいなくなっていた。
大好きになったネパールでの、どこか非現実的で夢のような思い出話。
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